音源マスタリングとは?仕上げで音が変わる基礎知識と手順を解説
2026/04/29(更新 2026/10/01)
マスタリングは、ミキシングが完了した音源に最終的な音量調整と音質補正を施し、リリースできる状態に仕上げる工程です。ミキシングが各トラックを1つのステレオ音源にまとめる作業なのに対し、マスタリングは完成したステレオ音源全体を対象にします。
セルフで行う手順は6つ。ヘッドルームを残して書き出し、リファレンスを用意し、EQ、コンプ、リミッターと進め、最後に複数の再生環境で確認します。
この記事では、マスタリングの意味とミキシングとの違い、行う処理、セルフマスタリングの流れ、注意点と依頼という選択肢までまとめました。
この記事の結論
- マスタリングは、完成したステレオ音源全体に最終調整を施す工程です。ミキシングは複数トラックを1つにまとめる作業で、対象が違います。
- 主な処理は、EQ・コンプレッション・リミッティングとラウドネス調整の3つ。アルバムでは曲間の音量と質感の統一も含まれます。
- ミックスの書き出しでは、マスタートラックにリミッターをかけないでください。ピーク音量が-6dB程度になるようヘッドルームを残します。
- リファレンス音源と交互に聴き比べながら進めましょう。主観だけで作業すると、音は偏っていきます。
- 主要なストリーミングサービスの推奨ラウドネスは-14〜-16 LUFS程度とされますが、プラットフォームごとに違うためリリース先の仕様を確認してください。
- 仕上げたら、スピーカー・イヤホン・スマートフォン・カーオーディオなど複数の環境で聴き直します。
マスタリングとは?ミキシングとの違いを整理する

マスタリングの基本的な意味
マスタリングとは、ミキシングが完了した音源に最終的な音量調整や音質補正を施し、リリースに適した状態に仕上げる作業のことです。
録音・ミキシングを経て完成した「ミックス音源」は、いわば「素材の完成形」。マスタリングはそこからさらに一歩踏み込み、スピーカー・イヤホン・スマートフォンなどあらゆる再生環境で安定して聴こえるように整える工程です。
音楽制作の最後の砦ともいえる作業で、この工程を経て初めて音源は「リリースできる状態」になります。
ミキシングとの違い
混同されやすいのが、ミキシングとマスタリングの役割の違いです。それぞれを整理すると、以下のように分けられます。
– ミキシング:複数のトラック(ボーカル・ギター・ドラムなど)を一つのステレオ音源にまとめる作業 – マスタリング:完成したステレオ音源全体に対して、最終調整を行う作業
ミキシングが「各パーツのバランスを整える」作業だとすれば、マスタリングは「完成した音源をリスナーに届ける最終仕上げ」と考えると理解しやすいでしょう。
ミキシングそのものの手順は音楽制作のミックスとは?、複数トラックをまとめる処理はバス処理とは?で扱っています。
マスタリングで行う主な処理

マスタリングでは、複数の処理を組み合わせて音源を仕上げます。代表的なものを確認しておきましょう。
イコライジング(EQ)
音源全体の周波数バランスを整える処理です。低音が膨らみすぎていたり、高音がきつすぎたりする場合に、全体の聴感上のバランスを調整します。
ミキシング段階で行ったEQとは異なり、ここでは音源全体を対象にした「最終的な色付け」として機能します。
帯域ごとの考え方はEQミックスの基本が入口になります。
コンプレッション
音のダイナミクス(音量の大小差)をコントロールする処理です。大きすぎる音を抑え、全体のまとまりを出すことで、聴きやすく安定した音源に仕上がります。
かけすぎると音が窮屈になるため、微妙な加減が求められる工程です。
パラメーターの読み方はコンプレッサーの使い方にまとめてあります。
リミッティングとラウドネス調整
マスタリングの最後に行うのが、リミッターをかけてピーク音量をコントロールする処理です。
ストリーミングサービス(SpotifyやApple Musicなど)には、それぞれ推奨されるラウドネス基準(LUFS値)があります。この基準に合わせて音量を整えることで、プラットフォームごとの音量変動を最小限に抑えられます。
目安として、現在主要なストリーミングサービスでは -14〜-16 LUFS 程度が推奨されていますが、プラットフォームごとに異なるため、リリース先の仕様を必ず確認するようにしましょう。
スペースの統一感
複数曲をアルバムやEPとしてリリースする場合は、曲間の音量バランスや音の質感を統一させる作業も含まれます。バラバラに制作した楽曲でも、マスタリングによってひとつの作品としての一体感が生まれます。
セルフマスタリングの基本的な流れ

プロのマスタリングエンジニアに依頼するのが理想ですが、予算の都合やリリースのスピード感を考えると、自分でマスタリングを行うインディペンデントアーティストも少なくありません。ここでは、セルフマスタリングの基本的な手順を紹介します。
| ステップ | 作業 | 目安・注意点 |
|---|---|---|
| 1 | ミックス音源の書き出し | マスターにリミッターをかけず、ピーク-6dB程度のヘッドルームを残す |
| 2 | リファレンス音源を用意する | 同じジャンルで、目標にしたい市販曲を選ぶ |
| 3 | EQで帯域のバランスを整える | 数dB単位の繊細な調整にとどめる |
| 4 | コンプレッサーでまとまりを出す | GRメーターが常に大きく動くのはかけすぎ |
| 5 | リミッターでラウドネスを設定 | リリース先の推奨LUFSに合わせる |
| 6 | 複数の再生環境で確認する | スピーカー・イヤホン・スマホ・カーオーディオ |
ステップ1:ミックス音源の書き出し
まず、DAW(デジタルオーディオワークステーション)でミキシングを終えた音源を書き出します。この段階では、マスタートラックにリミッターなどのエフェクトをかけないで書き出すのが基本です。
音量に余裕(ヘッドルーム)を残した状態で書き出すことで、マスタリング時の処理がしやすくなります。目安として、ピーク音量が-6dB程度になるよう調整しておくとよいでしょう。
ステップ2:リファレンス音源を用意する
自分の音源と比較するための基準として、プロがリリースした楽曲(リファレンス音源)を用意します。自分の音源に近いジャンルで、音質的に「これくらいにしたい」と思える楽曲を選びましょう。
主観だけで作業を進めると、いつの間にか音が偏っていることがあります。リファレンスと交互に聴き比べながら作業することで、方向性を見失わずに仕上げられます。
ステップ3:EQで音のバランスを整える
リファレンス音源と比較しながら、低音・中音・高音の各帯域のバランスを確認します。不要な帯域を削るのか、足りない帯域を持ち上げるのかを判断し、慎重に調整しましょう。
マスタリングのEQは「数dB単位の繊細な調整」が基本です。大きく動かしすぎると、かえって音が不自然になりますのでご注意ください。
ステップ4:コンプレッサーでまとまりを出す
全体のダイナミクスを整えるために、マルチバンドコンプレッサーまたはステレオバスコンプレッサーを使用します。音のグルーヴ感を生かしつつ、全体がひとつにまとまるような設定を心がけましょう。
コンプのかけすぎは「音が死ぬ」原因になります。GRメーター(ゲインリダクション)が常に大きく動いている状態は、かけすぎのサインです。
ステップ5:リミッターでラウドネスを設定する
最後にリミッターをかけ、ラウドネス(全体の音量感)を目標のLUFS値に調整します。リリース先のプラットフォームが推奨するラウドネスに合わせて設定してください。
ラウドネスメーターを使って計測しながら作業するとよいでしょう。DAWによっては標準でラウドネスメーターが搭載されているものもありますが、サードパーティ製のプラグインを活用する方法もあります。
候補はマスタリングプラグインおすすめ10選にまとめました。
ステップ6:複数の環境で確認する
マスタリングが完了したら、スピーカー・イヤホン・スマートフォン・カーオーディオなど、異なる再生環境で聴き直しましょう。どの環境でも自然に聴こえるかどうかを確認することが、マスタリングの重要な最終チェックです。
セルフマスタリングのポイントと注意点

耳を休めてから作業する
長時間ミキシング作業をした直後にマスタリングに入ると、耳が疲弊していて正確な判断ができません。できれば一晩置いてから、フレッシュな状態で作業することをおすすめします。
AIマスタリングツールの活用
近年は、AIを活用した自動マスタリングサービスも普及しています。手軽に一定品質のマスタリングができるため、デモ音源の仕上げや、急ぎのリリースには選択肢のひとつになるでしょう。
ただし、繊細なニュアンスや楽曲の意図を反映させるには、人の耳による判断が重要です。本番リリースには、可能であれば手動での調整やプロへの依頼を検討するとよいでしょう。
使いどころの見極めはマスタリングAI活用ガイドが詳しいです。
プロに依頼するという選択肢
予算が許すのであれば、マスタリングエンジニアへの依頼は有力な選択肢です。費用は1曲あたり数千円〜数万円と幅がありますが、音質面のクオリティが上がる場面は多いでしょう。
依頼の際は、料金・納期・対応形式をあらかじめ確認されることをおすすめします。
仕上げた音源の送り先は配信代行サービス徹底比較をご覧ください。
よくある質問
マスタリングとミキシングは何が違いますか?
対象が違います。ミキシングは、ボーカルやギター、ドラムといった複数のトラックを1つのステレオ音源にまとめる作業です。
マスタリングは、そうして完成したステレオ音源全体に最終調整を施し、どの再生環境でも安定して聴こえる状態に整える工程になります。
マスタリングでは何をしますか?
イコライジング、コンプレッション、リミッティングとラウドネス調整が中心です。EQで音源全体の周波数バランスを整え、コンプで音量の大小差をまとめ、リミッターでピークを抑えます。
アルバムやEPとしてリリースする場合は、曲間の音量バランスや音の質感を統一する作業も含まれます。
ミックス音源はどう書き出せばよいですか?
マスタートラックにリミッターなどのエフェクトをかけないで書き出してください。
ピーク音量が-6dB程度になるようヘッドルームを残しておくと、マスタリング時の処理がしやすくなります。
ラウドネスはどのくらいに合わせますか?
主要なストリーミングサービスでは-14〜-16 LUFS程度が推奨されているとされます。ただしプラットフォームごとに異なるため、リリース先の仕様を必ず確認してください。
ラウドネスメーターで計測しながら作業します。DAW標準のメーターでも、サードパーティ製のプラグインでも構いません。
自分でマスタリングしても大丈夫ですか?
できます。ヘッドルームを残した書き出し、リファレンスとの比較、EQ、コンプ、リミッター、複数環境での確認という6ステップで進めてください。
長時間ミキシングした直後は耳が疲れて判断が鈍ります。できれば一晩置いてから作業しましょう。
AIマスタリングは使ってよいですか?
デモ音源の仕上げや急ぎのリリースなら、選択肢になります。手軽に一定の品質までは持っていけます。
一方で、繊細なニュアンスや楽曲の意図を反映させるには人の耳による判断が要ります。本番のリリースでは、手動での調整やプロへの依頼も検討してください。
プロに依頼する場合の費用はどのくらいですか?
1曲あたり数千円から数万円と幅があります。依頼の前に、料金・納期・対応形式を確認しておきましょう。
金額や条件は変更される可能性があるため、各エンジニアやスタジオの最新の案内で確かめてください。
音源マスタリングのまとめ
音源マスタリングとは、完成したミックス音源に最終的な音質調整・音量整理を施し、リリースできる状態に仕上げる作業です。
– ミキシング:複数トラックをまとめる – マスタリング:音源全体を最終仕上げする
セルフマスタリングの基本的な流れは、「ミックス音源の書き出し → EQ → コンプ → リミッター → 複数環境での確認」です。リファレンス音源と比較しながら作業することで、方向性を保ちやすくなります。
丁寧に仕上げた音源は、聴く人への届き方が変わります。ぜひ今回の内容を参考に、自分の音楽を最善の状態でリリースしてみてください。
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インディペンデントアーティスト編集部
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