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コラム

音楽をやめたい気持ちが消えないとき。原因の整理と選べる道を解説

夜中にギターをケースにしまいながら、ふと「もう、やめたほうがいいのかもしれない」と思う。そんな瞬間が訪れたことはないでしょうか。

仕事から帰って疲れた体で機材を立ち上げても、手が動きません。告知した配信の視聴者が二人しかいなかった日、次の曲を作る意味が分からなくなります。

その気持ちは、才能がないことの証明でも、覚悟が足りないことの証明でもありません。長く続けている人ほど、活動のどこかで一度は同じ場所を通り過ぎています。

そこで本記事では、音楽をやめたい気持ちについて、原因の整理から具体的な切り分け方、選べる道までを順を追って解説します。


「音楽をやめたい」と感じるのは特別なことではありません

guitar case closed room (Photo: Connor Scott McManus / Pexels)

まず知っておいてほしいのは、この気持ちを抱く人がとても多いということです。何年も続けている人ほど、一度や二度は同じ場所に立っています。

続けている人と、やめた人。その違いは意志の強さではなく、やめたいと感じた時期をどう扱ったかにあることが少なくありません。感情そのものを消そうとすると、かえって苦しくなります。

「好きなことなのに、なぜつらいのか」と自分を責める方もいます。けれど好きかどうかと、活動が楽かどうかは別の話です。好きだからこそ、思うようにいかない現実が重くのしかかります

制約のある環境では、なおさらそうなります。平日は仕事、休日は家庭。残された時間を音楽に注いでも、結果が見えるまでには長い時間がかかります。

「やめたい」という言葉の中身は、人によってまったく違います。もう音符も見たくないという状態もあれば、今の活動の形だけがつらいという状態もあります。この違いを見ないまま結論を出すと、後悔につながりやすくなります。

だからこそ、最初にすべきことは決断ではありません。自分が何に疲れているのかを、できるだけ正確に知ることが先になります。

この記事では、そのための順序を一つずつ示していきます。急いで答えを出す必要はありませんので、当てはまるところだけ拾い読みしてください。

やめたい気持ちが生まれる主な原因

tired musician empty stage (Photo: Ron Lach / Pexels)

原因を言葉にできると、それだけで対処の見当がつくようになります。ここでは、活動を続ける人のあいだで繰り返し語られる代表的なものを整理します。

成果が見えないことは、大きな要因です。再生数、動員数、フォロワー数といった指標は分かりやすい一方で、伸びない時期には自分の価値を否定されているように感じさせます。数字と自分の値打ちは別物ですが、そう思い込まずにいるのは簡単ではありません。

時間が確保できないことも重くのしかかります。仕事や育児に追われ、練習も制作も進まない日が続くと、前に進んでいる実感が失われます。焦りだけが積み重なっていきます。

比較も気持ちを削ります。同世代のアーティストが評価されているのを見るたび、自分の歩みが遅く感じられます。SNSでは他人の良い場面だけが流れてくるため、比較の材料には向いていません。

金銭的な負担も無視できません。機材、スタジオ代、交通費、制作費。持ち出しが続けば、続ける理由を説明しづらくなります。

孤独も原因になります。一人で作り、一人で告知し、一人で反応を待つ日々では、相談できる相手がいません。うまくいかない理由を、自分だけで抱え込むことになります。

周囲の視線が重い方もいるでしょう。「いつまで続けるの」という言葉は、悪意がなくても深く刺さります。説明しなければならない相手が多いほど、活動そのものが重たくなっていきます。

単純な疲労が原因のこともあります。睡眠が足りていない時期に将来を考えると、ほぼ確実に暗い結論が出ます。体の状態が判断を左右している場合は、まず休むことが先になります。

「やめたい」のか「休みたい」のかを切り分ける

two paths fork road (Photo: Han-Chieh Lee / Pexels)

多くの場合、やめたいと感じているものは音楽そのものではありません。今の活動の形、今の頻度、今の環境。そのどれかが合っていないことのほうがずっと多いのです。

切り分けるための問いを、いくつか挙げます。紙に書きながら答えると、頭の中だけで考えるより整理が進みます

一つ目は、他人の音楽を今でも聴きたいと思えるかという問いです。聴くことすら苦しいのであれば、疲労が深い段階にある可能性があります。この場合は判断そのものを先送りし、休むことを優先しましょう。

二つ目は、活動をやめた自分を想像したときに、どう感じるかという問いです。安堵が来るのか、それとも喪失感が来るのか。安堵と喪失感が同時に来ることもあり、それは矛盾ではありません

三つ目は、何がなくなれば楽になるかという問いです。ライブの集客なのか、SNSの更新なのか、締め切りなのか。特定の作業だけが嫌なら、やめるべきなのはその作業であって音楽ではありません

四つ目は、去年の自分に戻れるとしたら音楽を始めるかという問いです。それでも始めると答えるなら、気持ちは残っています。

五つ目は、誰のために続けてきたのかという問いです。他人の期待に応えるための活動になっていた場合、疲れて当然といえます。

これらの答えを並べてみると、「音楽が嫌になった」と「今の続け方が限界」のどちらなのかが、少しずつ見えてきます。

気持ちを紙に書き出して整理する手順

writing notebook pen desk (Photo: https://kaboompics.com/ / Pexels)

考えが同じところを回り続けるときは、外に出すと動きます。費用はかかりませんし、三十分ほどで終わります

最初に、紙を一枚用意します。スマートフォンのメモでも構いませんが、手で書いたほうが速度が落ちて考えが整理されやすいと感じる方が多いようです。

一つ目の作業は、つらいことを思いつくまま書き出すことです。順序も文章の整い方も気にしません。十個から十五個ほど出すと、本当に重いものが自然と浮かび上がってきます。

二つ目の作業は、書き出した項目を三つに仕分けることです。自分で変えられること、誰かに頼めば変えられること、変えられないこと。この仕分けだけで、悩みの量は目に見えて減ります

三つ目の作業は、変えられないことに線を引くことです。他人の評価や過去の選択は、考えても動きません。線を引いた項目は、今日は考えないと決めましょう。

四つ目の作業は、残った項目に一つずつ「小さくする方法」を書き添えることです。練習時間が取れないなら、十分でできる練習に置き換えるといった具合です。理想の形をいったん脇に置きます。

五つ目の作業は、楽しかったことを三つ書くことです。つらいことばかり見ていると、続けてきた理由が視界から消えます。小さな出来事で構いません

書き終えたら、その紙をしまっておきましょう。数か月後に読み返すと、何が変わったのかが分かります。

やめる前に試せる、活動を小さくする選択肢

acoustic guitar small room (Photo: Pavel Danilyuk / Pexels)

やめるか続けるかの二択で考えると、逃げ道がなくなります。実際には、その間にいくつもの段階があります。

頻度を落とすという方法があります。月に一本出していた曲を三か月に一本にする、毎週の配信を月一回にする。続けることを目的にするなら、間隔を空けても構いません。

発表の場を絞るやり方もあります。SNSを複数運用していると、それだけで時間と気力を消費します。一つに絞り、残りは更新を止めるだけでも負担は変わります。

役割を減らす方法も検討できます。作詞、作曲、編曲、録音、動画編集、告知と、一人ですべてを担っていると、音楽以外の作業に時間の大半が消えていきます。苦手な工程を一つ手放すだけで、続けられる形になることがあります

目標を書き換える選択もあります。有名になることを目標に置いていた時期を終え、年に一度のライブを続けることを目標にする。目標の高さと苦しさは、しばしば比例します。

活動の場所を変えるという手もあります。同じライブハウスに出続けて手応えがないなら、規模の小さい会場や、オンラインの場に移してみる。環境が合っていないだけの場合も少なくありません。

期限を決めて休む方法も有効です。「三か月休む」と決めて機材から離れると、区切りがあるぶん罪悪感が減ります。期限のない休止は、そのままやめる形になりやすい点だけ気をつけましょう。

それでもやめると決めたときに残しておきたいもの

external hard drive desk (Photo: Luis Quintero / Pexels)

考え抜いたうえでやめる決断をすることは、逃げではありません。限られた時間をどこに使うかを選ぶことも、大切な判断です。

ただし、いくつか残しておくと後で助かるものがあります。将来また音楽に触れたくなったとき、ゼロから始めずに済むためです。

音源のデータは必ず保管しておきましょう。プロジェクトファイル、録音した音、書きかけの歌詞は、外付けのドライブとクラウドの二か所に置いておくと安心です。一度消してしまうと、二度と取り戻せません。

楽器は急いで手放さないことをおすすめします。売却は一日で済みますが、買い戻すには費用も手間もかかります。数か月置いてから判断しても遅くはありません。

アカウントは削除せず残すほうが無難です。過去の投稿は、あとから見たときに記録として意味を持ちます。休止の告知だけ出して、更新を止めておく形で十分です。

つながった人との関係も、切らずにおきましょう。共演したアーティストやスタッフとの縁は、活動を離れても残ります。戻るときに声をかけられる相手がいることは、大きな支えになります。

やめる理由を書き残しておくことも役に立ちます。時間が経つと、自分がなぜやめたのかを思い出せなくなります。書いたものがあれば、再開を考えるときに冷静に判断できます。

なお、気持ちの落ち込みが長く続いていたり、日常生活に支障が出ていたりする場合は、専門の窓口や医療機関に相談することも検討しましょう。

戻ってきた人たちに共通していること

musician picking up guitar (Photo: Alfredo Marco Pradil / Pexels)

一度離れて、また音楽を始める人は珍しくありません。その人たちが再開までにたどった道のりには、いくつか共通する点が見られます。

完全にゼロにはしていなかったという点が挙げられます。演奏はやめても聴くことは続けていた、作曲はしなくても思いついた旋律をスマートフォンに録っていた、といった具合です。細い線が残っていたからこそ、戻ってこられたといえます。

再開の入口を小さくしていたことも共通します。いきなりライブを組むのではなく、一曲だけ弾いてみる、昔の音源を聴き返す。大きく再開しようとすると、その重さで再び止まります

続け方を変えていた人も多くいます。以前と同じやり方に戻るのではなく、頻度や規模や発表の場を組み直しています。同じ形に戻れば、同じ場所でまたつまずくためです。

目的を置き直していたという点も見られます。評価や数字ではなく、作ること自体や、目の前の数人に届けることを軸にする。軸を置き直すと、比較の材料が減ります

休んだ時間を否定していなかったことも印象的です。離れていた期間を無駄だったと考えず、生活や仕事の中で得たものを曲に持ち込んでいます。

もし今、やめたい気持ちの中にいるなら、その気持ち自体を否定しなくて構いません。感じているものを認めたうえで、休むのか、形を変えるのか、離れるのかを選べばよいのです。

まとめ

sunrise window quiet morning (Photo: Yaseminmsl / Pexels)

音楽をやめたい気持ちとの向き合い方について、要点を整理します。

  • やめたいと感じることは珍しくなく、続けている人の多くが通る場所
  • 原因は成果の見えなさ、時間、比較、費用、孤独、疲労などに分けられる
  • 眠れていない時期の判断は暗くなりやすく、まず休むことが先になる
  • やめたいのか休みたいのかを、五つの問いで切り分ける
  • 紙につらいことを書き出し、変えられるかどうかで三つに仕分ける
  • やめるか続けるかの二択ではなく、頻度・役割・目標・場所を小さくする道がある
  • 期限を決めて休むほうが、期限のない休止より戻りやすい
  • やめる場合も、音源データ・楽器・アカウント・人との縁は残しておく
  • 再開した人は完全にゼロにせず、小さな入口から戻っている

まずは紙を一枚用意して、今つらいと感じていることを十個書き出してみてください。整理はそこから始まります。


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インディペンデントアーティスト編集部

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