地方、子育て、挫折。それでも“好き”を貫いたロリィタファッションのジャズピアニスト
黒いスーツが当たり前のジャズの世界で、フリルのついたロリィタファッションをまとい、ピアノを弾く女性がいる。
栃木県宇都宮市を拠点に活動する、ジャズピアニスト・Pianozomiさん。
演奏活動、音楽教室の運営、そして子育て。
“好きなことを貫く”をモットーに活動する彼女は、現在オンラインライブプラットフォーム「corom」で全国にファンを増やしています。
しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
家族との別れ。
子育てによるキャリアの断絶。
「その格好でジャズをやるの?」という批判。
それでも彼女は、“自分らしい音楽”を諦めませんでした。
これは、何度も大きな挫折を経験しながら、唯一無二のスタイルで多くのファンを魅了するロリィタファッションを着るジャズピアニストの物語です。

就職活動全敗。“音楽で生きる”しか残らなかった
Pianozomiさんがピアノを始めたのは3歳の頃。
小中学生では合唱伴奏を担当し、高校では美術専門コースへ進学。
転機になったのは、高校時代に出会った英語の先生。
趣味でジャズドラムを演奏していたその先生にCDを聴かせてもらい、初めてセッションした瞬間、「音が会話している感覚」があったといいます。
そこから放課後のたびに音楽室でセッションを重ね、次第にジャズへとのめり込んでいきました。
大学でもジャズサークルへ入り、趣味だったはずの音楽は、少しずつ人生の中心になっていきます。
高校時代から大学時代も、成績優秀だったPianozomi さん。
しかし、就職氷河期の現実は厳しく、就職活動は全敗でした。
「勉強を頑張れば道は開けると思っていた。でも、社会はそれだけじゃなかった。」
初めて、自分の将来が見えなくなった瞬間でした。
そんな時、就職支援センターの担当者から言われた言葉があります。
「そこまでジャズをやっているなら、ジャズピアニストになった方がいい」
さらに、最終面接直前まで進んでいた会社について両親へ報告した際、「本当にそれでいいの?」と問いかけられたことで、自分の本音と向き合うことになります。
安定した企業への就職ではなく、“演奏家として生きる道”を選ぶ。
そう決めた彼女は、ジャズベーシスト・河上修氏に弟子入りしました。
もちろん不安はありました。
収入は不安定で、塾講師のアルバイトを掛け持ちしながらの生活。
それでも、「嫌なことをしてまでお金を稼ぎたくなかった」と彼女は語ります。
好きなことを続けた結果、少しずつ演奏依頼が増え、やがて音楽だけで生活できるようになっていきました。

人生が崩れた時、“本当に好きな自分”を隠したくなくなった
順調に見えた音楽人生。
しかし2018年頃、Pianozomiさんの人生は大きく揺らぎます。
ある日突然起きた、 自分の生活を揺るがす家族の問題。
その一年後、弟の突然死。
前日まで普通に会話していた人が、翌日にはいなくなる。
「当たり前の明日なんて、どこにも保証されていない」
そう痛感した出来事でした。
その経験を経て、彼女の価値観は変わります。
「明日自分はいなくなるかもしれない。じゃあ本当に好きなことをしよう」
そこで彼女が選んだのが、“好きな服で演奏する”というスタイルでした。
実は、ロリィタファッション自体は以前から好きだったものの、人目を気にしながら着ていたといいます。
しかし、「人はいつ死ぬかわからない」と実感した時、我慢する理由がなくなりました。
こうして、“ロリィタファッションでジャズを奏でるピアニスト”という唯一無二のスタイルが生まれます。
黒いスーツでシックに演奏するのが当たり前だったジャズの世界。
もちろん、批判もありました。
「ジャズにロリィタはありえない」
「何を考えているんだ」
そんな声を受けながらも、彼女は演奏を続けました。
“自分らしく音楽をやる”という覚悟が、そこにはありました。

子育てで演奏の場を失った時、coromと出会った
2020年、出産。
さらにコロナ禍が重なり、リアルライブの仕事は激減します。
ライブが戻り始めても、今度は“子育て”が壁になりました。
ジャズライブは夜が中心。
幼い子どもを育てながら、夜の出演依頼を受けることは難しかったのです。
「演奏したい。でも、行けない。」
断り続けるうちに、演奏依頼も減っていきました。
さらに、リトミック教室を始めても、“集客”の難しさに直面します。
地方で音楽活動を続けること。
音楽で収入を安定させること。
自分でファンづくりをすること。
演奏力だけでは続けられない現実が、そこにはありました。
そんな時、広告で見つけたのがオンラインライブプラットフォーム「corom」でした。

“配信”ではなく、“コンサート”として届けられる場所
それまでPianozomi さんは、ライブ配信に苦手意識を持っていました。
投げ銭中心の配信文化。
雑談メインの空気感。
「自分には合わない」と感じていたのです。
しかし、coromは違いました。
チケット制のオンラインライブ。
“ちゃんと演奏を届ける場所”として存在していた。
「ここなら、演奏家としていられると思ったんです。」
娘さんが幼稚園へ行っている昼間の数時間。
その“空白時間”を使ってオンラインライブを始めたことで、再び演奏活動が動き出しました。
地方にいても、子育て中でも、全国に音楽を届けられる。
オンラインライブによって、“もう一度ステージに立てた”感覚があったといいます。

「好きなことを我慢しなくていい」と伝えたい
Pianozomiさんの元には、こんな声が届くことがあります。
「実は私も、若い頃ロリィタファッションが好きだったんです」
その言葉を聞くたびに、彼女は思うといいます。
「じゃあ、なんで今は着ていないんだろう?」
年齢や人目を理由に、“好き”を諦めてしまう人は少なくありません。
好きだったはずなのに、いつの間にか諦めてしまうものが、大人になるほど増えていく。
だからこそPianozomiさんは、自身の演奏を通して、「好きなことを我慢しなくていい」と伝えたいと話します。
演奏を聴き終わる頃には、
「これやってみようかな」
「しまい込んでいた服を、もう一度着てみようかな」
そんな風に、誰かが新しい一歩を踏み出すきっかけになれたら嬉しいと語ります。
どんな批判があっても、自分らしい表現を貫ける理由。
その根底には、突然亡くなった弟の存在があります。
「“お姉ちゃんは今、生きてるんだから”って、言われている気がするんです」
だからこそ、好きなことを諦めない。
自分らしく生きる。
Pianozomiさんは、10月のcorom主催のリアルライブ「Zepp DiverCity(TOKYO)」の出演に向かっています。
そしてその先の目標としてBlue Note出演を掲げています。

もう一度、自分の音楽と向き合える場所
Pianozomiさんは、coromを「自分を知れる場所」だと語ります。
オンラインライブを続ける中で、「本当はこんな自分もいたんだ」と気づく瞬間が増えたといいます。
音楽も人生も、変化していくもの。
だからこそ、「変わることを怖がらないでほしい」と彼女は話します。
遠回りしても、迷ってもいい。
その経験も全部、“生きている証”だから。
ただ、一つだけ忘れないでほしいことがある。
「自分が本当に好きだったものは、貫いてほしい」
辛い時に戻ってこられる場所になるのは、ずっと好きだった音楽や表現だから。
地方で活動している人も。
子育てや仕事と両立しながら音楽を続けている人も。
一度夢を諦めかけた人も。
「今さら遅いかもしれない」と思わなくていい。
coromは、音楽を諦めきれない人が、もう一度歩き出すためのステージです。
あなたも、その一歩を踏み出してみませんか。
