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音楽制作

ノイズ除去の方法!録音時とDAWでの実践テクニック

録り終えた音を再生した瞬間、後ろで「サー」という音が鳴り続けている。歌の合間に、エアコンの低い唸りが顔を出す。そんな経験はないでしょうか。

演奏そのものは悪くないのに、ノイズがあるだけで音源全体が頼りなく聞こえてしまいます。とはいえ、いつでも録り直せる環境がある方ばかりではありません。

そこで本記事では、ノイズ除去の方法を、録音の段階でできる予防からDAWでの処理、やりすぎを避ける判断まで、順を追って解説します。


ノイズはどこから入り込むのか

studio microphone close up (Photo: Neil Yonamine / Pexels)

ノイズ除去に取りかかる前に、まず何が鳴っているのかを見分ける必要があります。原因によって、有効な対処がまったく変わるからです。

最も多いのが、常に一定の音量で鳴り続ける定常ノイズです。マイクやオーディオインターフェース自体が出す「サー」というヒスノイズ、エアコンや空気清浄機の低い唸り、パソコンのファンの回転音などがこれにあたります。

次に厄介なのが、電源に由来するハムノイズです。「ブーン」という持続音で、地域によって50Hzか60Hz、そしてその整数倍の周波数に成分が集中するという特徴があります。

一方、突発的に一度だけ鳴るノイズもあります。ケーブルの接触音、譜面をめくる音、歌い出し前のリップノイズ、ペダルの軋み。これらは持続しないぶん、波形上で位置を見つけて個別に処理できます。

最後に挙げたいのが、環境音のかぶりです。車の走行音、隣室の生活音、雨。演奏と同時に、しかも似た帯域で鳴っているため、後から取り除くのが最も難しい種類といえます。

自分の音源で鳴っているのがどれなのかを、まず言葉にしてみてください。それだけで、次に打つべき手がかなり絞り込まれます。

録音の段階でノイズを減らす

singer recording vocal booth (Photo: cottonbro studio / Pexels)

結論から言えば、録音時に入れないことが、あらゆる除去処理に勝ります。後処理はどこまでいっても引き算であり、一度失われた成分は戻ってきません。

最初に見直したいのがゲインの設定です。入力レベルが低すぎる状態で録ると、後から音量を持ち上げる必要が生じ、そのときノイズも一緒に大きくなってしまいます。演奏の最大音量でピークが-12dBから-6dBあたりに収まるよう調整しておきましょう。

マイクと音源の距離も大きく効きます。マイクを近づけて目的の音を大きく捉えられれば、相対的に背景ノイズが小さくなるためです。ただし近づけすぎると近接効果で低音が膨らむので、10cmから20cm程度を起点に、耳で確かめながら詰めるのがおすすめです。

指向性の選択も忘れないでください。単一指向性のマイクを使い、ノイズ源に背を向ける向きで構えるだけで、エアコンやパソコンの音はかなり減ります。

そして、録る前に部屋の音を止めるという単純な対策があります。エアコン、換気扇、冷蔵庫、スマートフォンの通知音。テイクを録る数分間だけ止めれば済むものは、思い切って止めてしまいましょう。

パソコンのファンが回る場合、本体を布で覆うと熱がこもります。覆うのではなく、マイクから距離を取る配置を検討してください。

電源とケーブルが生むハムノイズ

audio cables power strip (Photo: Alena Sharkova / Pexels)

「ブーン」という音がどうしても消えないとき、疑うべきは機材の性能ではなく、電源とケーブルの取り回しです。

アースの取り方が原因になっている場合があります。オーディオインターフェースとパソコン、アンプといった複数の機器が別々のコンセントから電源を取っていると、機器間に電位差が生じ、それがノイズとして乗ることがあるためです。使う機器の電源を1つの電源タップにまとめるだけで収まるケースも少なくありません。

シングルコイルのギターやベースは、構造上ハムを拾いやすい楽器です。演奏者の体の向きを変える、パソコンのディスプレイから離れる、といった対処で目に見えて改善することがあります。実際に弾きながら体を回してみて、最もノイズが小さくなる角度を探してみてください。

ケーブルの取り回しも見直しましょう。電源ケーブルとオーディオケーブルを長い距離にわたって並走させると、電磁的な影響を受けやすくなります。どうしても交差する場合は、平行ではなく直角に交わるよう配置するとよいでしょう。

照明器具が原因のこともあります。調光器付きの照明や、電源部が簡素なLED器具は、ノイズの発生源になりがちです。録音中だけ消してみて、音が変わるかどうかを確認してみましょう。

一度にすべてを変えるのではなく、一つずつ試して切り分けていくのが結局は近道です。

DAWでできる基本のノイズ処理

laptop music software waveform (Photo: Egor Komarov / Pexels)

ここからは、録り終えた素材への処理です。専用ソフトを買わなくても、DAWの標準機能だけでできることが数多くあります。

鳴っていない場所を消す

最も確実で、しかも音質を損なわない方法が、演奏していない区間の波形そのものを削除することです。歌のテイクならフレーズとフレーズの間、ギターなら弾いていない小節が対象になります。

切り取る際は、切れ目に短いフェードイン・フェードアウトを付けてください。ぶつ切りにすると、その境目で「プツッ」というクリックノイズが新たに生まれてしまいます。

ノイズゲートで自動化する

区間が多すぎて手作業が現実的でない場合は、ノイズゲートを使いましょう。設定した音量を下回った信号を自動的に絞り込むプラグインです。

スレッショルドは、ノイズの音量よりわずかに上に設定します。閉じる速度を速くしすぎると語尾が不自然に途切れるため、リリースは緩やかにしておくと自然に仕上がります。

不要な帯域を削る

ハイパスフィルターで、楽器が鳴っていない低域を落とすのも効果的です。歌なら80Hz前後、ギターなら60Hz前後から下を緩やかに削ると、空調の唸りや床からの振動音が軽くなります。

ハムノイズが残る場合は、EQで50Hzまたは60Hzとその倍音を、幅を狭くしてピンポイントに削る方法もあります。

専用ツールとAIによる除去

computer screen audio editing (Photo: Ron Lach / Pexels)

標準機能では足りないときに登場するのが、ノイズ除去に特化したツールです。

この種のソフトの中心にあるのが、スペクトル解析にもとづく処理という考え方になります。音を時間と周波数の二次元に展開し、ノイズが占めている成分だけを狙って減らす仕組みです。

使い方の基本は、ノイズだけが鳴っている区間を学習させることにあります。演奏が始まる前の1秒ほどの部分を選び、そこに含まれる成分を「これがノイズ」として登録する。あとは全体に適用すれば、学習した成分が引き算されます。

そのため、録音の頭に数秒の無音を録っておく習慣が大きく役に立ちます。演奏を始める前に、部屋の音だけを録っておく。この一手間が、後の作業を助けてくれます。

近年は、機械学習を使った除去機能も広く使われるようになりました。声と背景音を分離する処理や、残響を軽減する処理まで実用域に入ってきています。DAWの新しいバージョンに標準搭載されている場合もあるため、まずは手元の環境で使えるものを確認してみましょう。

有償の専用ソフトは、グレードによって価格に幅がありますが、数千円から数万円程度が目安です。セール時期に価格が下がることも多く、仕様や価格は変更される可能性があるため、購入前に公式の情報を確かめてください。

取りすぎると音は痩せていく

sound engineer wearing headphones (Photo: Ivan Mudruk / Pexels)

ノイズ除去で最も多い失敗は、取り残しではなく、取りすぎのほうです。

強くかけるほど、音は不自然になっていきます。声の子音が水中で鳴っているように濁る、シンバルの余韻が金属的に揺れる、部屋の自然な響きごと消えて平板になる。こうした副作用は、ノイズが消えた爽快感の裏で静かに進行します。

判断を誤りやすいのは、処理した音をソロで聴いてしまうときです。単体で聴けば、ノイズが消えるほど良くなったように感じられます。しかしミックス全体の中では、他の楽器がノイズを覆い隠してくれるため、そこまで強い処理は必要ありません。

必ず、全体を鳴らした状態で効き具合を決めてください。プラグインのオンとオフを切り替えながら、ノイズが減ったかどうかではなく、音の質感が失われていないかを聴き取ります。

設定としては、減衰量を控えめに抑えた状態から始めるとよいでしょう。完全にゼロにしようとせず、気にならない程度まで下げる。この考え方に切り替えるだけで、仕上がりが安定します。

処理の前後を書き出して、時間を置いてから聴き比べるのも有効な方法です。作業直後の耳は、自分がかけた処理にすっかり慣れてしまっています。

消せないノイズと、録り直しの判断

guitarist recording home studio (Photo: Andrea Piacquadio / Pexels)

すべてのノイズが取れるわけではありません。どこで線を引くかも、実践では重要な判断になります。

演奏と周波数が重なっているノイズは、原理的に分離が困難です。歌と同じ帯域で鳴り続ける環境音や、演奏と同時に入ったドアの開閉音。これらを無理に取ろうとすると、演奏側が確実に傷みます。

歪んでしまった箇所も、後から元に戻すことはできません。入力レベルが振り切れてクリップした音は、失われた波形そのものを復元できないためです。

こうした場合の選択肢は、大きく3つあります。

  • その部分だけを録り直す
  • 他の音で覆い隠す
  • そのまま残して、演奏の勢いを優先する

覆い隠すという発想は、意外なほど有効です。ノイズが目立つのは、周囲が静かな瞬間だからにほかなりません。その位置にシンバルやシンセのパッドが入っていれば、聴き手はノイズに気付かないまま通り過ぎます。

そして、録り直したほうが早い場面は確実に存在します。30分かけて処理に悩むより、5分で録り直したほうが良い結果になることは珍しくありません。作業に手間取り始めたら、一度その判断を挟んでみてください。

まとめ

warm home studio desk (Photo: Jakub Zerdzicki / Pexels)

ノイズ除去の方法について、押さえておきたいポイントを整理します。

  • ノイズは定常音、電源由来のハム、突発音、環境音のかぶりに大別できる
  • 後処理は引き算なので、録音時に入れないことが最優先になる
  • ゲインを適正にし、マイクを近づけ、指向性で不要な方向を避ける
  • ハムが出るときは電源をまとめ、ケーブルの並走を避けて原因を切り分ける
  • 鳴っていない区間を消すのが、最も音質を損なわない除去方法
  • ノイズゲートとハイパスフィルターで、手作業を大きく減らせる
  • 専用ツールは無音部分を学習させて使うため、頭に数秒の無音を録っておく
  • 効き具合はソロではなくミックス全体で判断し、控えめにとどめる
  • 分離できないノイズは、覆い隠すか録り直すほうが早いこともある

まずは次の録音の前に、部屋の音だけを10秒録ってみてください。自分の環境で何が鳴っているのかが分かるだけで、対策の精度は大きく変わります。


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