英語歌詞の作り方!日本人アーティストの英語ライティング術
2026/08/09(更新 2026/08/16)
英語で歌詞を書いてみたものの、自分の英語が通じているのか分からない。翻訳ツールに通した文章を並べただけの状態で、手が止まっている方もいるのではないでしょうか。
英語詞は、書き方の勘所さえつかめば、語学力が高くなくても形にできます。求められるのは正確な作文ではなく、メロディに乗る言葉を選ぶ感覚だからです。
そこで本記事では、日本人アーティストが英語歌詞を作る方法を、目的の決め方から音の設計、表現選び、校正の頼み方まで順を追って解説します。
何のために英語で書くのかを決める

目的が曖昧なまま英語にすると、伝わらない歌詞になりがちです。書き始める前に、なぜ英語なのかを言葉にしておきましょう。
考えられる動機は、いくつかあります。
- 海外のリスナーに聴いてもらいたい
- 曲調やジャンルに日本語が乗りにくい
- 英語の響きそのものを音として使いたい
- 日本語では直接的すぎる内容を、少し離れて書きたい
海外に届けたい場合は、意味が正確に伝わることが優先されます。文法や語法の粗さが、聴き手の集中を切ってしまうためです。
響きを目的にする場合は、判断の基準が変わります。音として気持ちよく乗ることが最優先で、意味の密度は下がっても構いません。実際、英語圏のポップスにも、意味より語感を優先した歌詞は数多くあります。
日本語との距離を取りたい場合は、また別の書き方になります。日本語では気恥ずかしくて書けない感情も、英語なら置けることがあります。
自分がどれを求めているのか。ここが決まると、後の判断はすべて速くなります。
日本語と英語では、乗る音の数が違う

日本語は1つの音符に1つの音を乗せ、英語は1音節を乗せる。この違いが、英語詞を難しく感じさせる最大の原因です。
たとえば「ありがとう」は5音を必要としますが、同じ意味の「thanks」は1音節で済みます。同じ小節に、英語のほうがはるかに多くの情報を詰め込めるということです。
逆に言えば、日本語の感覚のまま英語を当てはめると、音符が余ります。ここで無理に単語を足すと、歌詞が説明的になっていきます。
意識しておきたいのは、次の点です。
- 単語の中で、どの音節が強く発音されるか
- 強い音節を、小節の強拍に置けているか
- 語尾の子音が、次の単語とつながって聞こえるか
強拍と強勢がずれると、不自然に聞こえます。「beautiful」は最初の音節が強い単語なので、後ろの音節を強拍に置くと、聴き手には引っかかりとして届きます。
子音のつながりも重要です。英語では単語の終わりの子音が次の語頭とつながり、1つの音のように聞こえることがよくあります。この現象を前提に組むと、歌として滑らかになります。
まずは好きな英語曲を、歌詞を見ながら口ずさんでみてください。どの音節が伸びているかを体で覚えるのが、遠回りに見えて確実な方法です。
意味より先に、音から書き始める

英語詞は、書きたい内容を先に文章化しないほうがうまくいきます。日本語で作った文章を訳す手順を踏むと、どうしても翻訳調の歌詞になります。
おすすめしたいのは、仮の音で歌ってみる方法です。意味のない音で自由にメロディを歌い、そこで自然に出てきた母音や子音を書き取ります。
その音に近い英語の単語を探していくと、メロディに無理なく収まる言葉が見つかります。メロディが先に単語を選んでくれるという感覚に近いかもしれません。
書き出しの手順を整理すると、次のようになります。
- 仮の音でメロディを歌い、録音する
- 繰り返し出てくる音の形を書き取る
- その音に合う短い単語を並べてみる
- 曲全体で伝えたい一言を決める
- その一言に向かって、周辺を埋めていく
サビの1行だけを先に決めるやり方も有効です。曲の芯になる言葉が決まると、残りの歌詞はその周りに置いていけばよくなります。
長い単語よりも、短く強い単語を選んでみてください。英語のヒット曲の歌詞を見ると、驚くほど平易な単語で組まれていることに気づきます。
文法の正しさとどう向き合うか

歌詞では、文法の一部が崩れていても許容されるのが実際のところです。英語圏の楽曲でも、主語が省略されたり、口語的な短縮形が使われたりする例は珍しくありません。
ただし、崩していい部分と、そうでない部分があります。ここを区別せずに崩すと、意図した表現ではなく単なる誤りとして受け取られてしまいます。
比較的許容されやすいのは、次のようなケースです。
- 主語や助動詞の省略
- 「ain’t」「gonna」といった口語表現
- 時制を厳密に揃えない書き方
- 語順を入れ替えた倒置
一方で、単数と複数の不一致、前置詞の誤り、動詞の形の間違いは、単純なミスとして目立ちます。ここは正確さを保っておきたい部分です。
冠詞の扱いも、日本語話者がつまずきやすいところです。「a」と「the」の使い分けは感覚的な要素が大きく、独学では判断しづらい領域といえます。
判断に迷ったときは、崩す前に一度、正しい形で書いてみましょう。正しい形を知ったうえで崩すのと、知らずに間違えるのとでは、聴こえ方が変わってきます。
使い古された表現から抜け出す

英語詞でよく起きるのが、既視感の強いフレーズばかりになる現象です。「in my heart」「never let you go」「shining star」。どれも間違いではありませんが、聴き手の印象には残りません。
原因は、辞書や翻訳ツールが最も一般的な訳語を返すことにあります。無難な語が集まると、歌詞全体も無難になっていきます。
抜け出すための手がかりを挙げます。
- 抽象語を、具体的な物や動作に置き換える
- 感情を説明せず、それが起きた場面を書く
- 自分の生活の中にある固有の言葉を混ぜる
- 比喩を、既製品ではなく自分で作る
「I’m sad」と書く代わりに、悲しい人が何をしているかを書く。コーヒーが冷めていく、電話を握ったまま動けない。具体的な描写のほうが、感情は伝わります。
日本語で書いていたときの発想を持ち込むのも有効です。日本語詞で情景を丁寧に描ける人は、その視点をそのまま英語に持っていけます。
英語詞を読む習慣も効いてきます。好きなアーティストの歌詞を印刷し、気になった表現に線を引いて手元に貯めておきましょう。自分の語彙は、そうやって少しずつ増えていきます。
翻訳ツールと辞書の使い分け

翻訳ツールは、下書きを作る道具としては優秀です。ただし、出てきた文章をそのまま歌詞にすると、説明的で平板な英語になりやすい傾向があります。
有効なのは、逆方向の確認に使う方法です。自分が書いた英語を日本語に訳し戻し、意図した意味になっているかを確かめます。ここでずれていれば、伝わらない表現だと分かります。
用途ごとに、道具を分けて考えてみましょう。
- 翻訳ツール:意味の下書きと、訳し戻しでの検証
- 英英辞典:単語のニュアンスと使われる場面の確認
- コロケーション辞典:どの語と組み合わせるかの確認
- 用例検索:実際にその表現が使われているかの確認
英英辞典を引く習慣は、特におすすめです。日本語訳では同じに見える単語でも、英語での説明を読むと使われる場面が違うと分かります。
用例を検索することも忘れないでください。自分が組み立てた表現をそのまま検索し、実際に使われているかを確かめます。ほとんど例が出てこない場合は、不自然な組み合わせかもしれません。
生成系のツールを使う場合も、候補を出させて自分で選ぶ使い方にとどめるのが安全です。全部任せると、自分の言葉ではなくなってしまいます。
ネイティブスピーカーに見てもらう工程

最終的な確認は、英語を母語とする人にお願いするのが確実です。自分では気づけない不自然さが、必ずどこかに残っているためです。
依頼するときは、歌詞であることを最初に伝えてください。作文として直されると、意図的に崩した部分まで整えられてしまいます。
伝えておきたい内容を挙げます。
- これは歌詞であり、メロディに乗ること
- 音節数を大きく変えられない箇所
- 意図的に崩している表現とその理由
- 曲全体で伝えたいこと
修正の理由を聞くようにしましょう。「なぜこの言い方が不自然なのか」を教えてもらえると、次からは自分で判断できるようになります。
依頼先としては、語学交換のアプリ、翻訳や校正のサービス、身近な留学経験者や英語話者の友人などが考えられます。費用や納期はサービスによって幅があり、変更される可能性もあるため、依頼前に確認しておきましょう。
歌ってみてもらうのが、最も精度の高い確認方法です。実際に声に出したときの引っかかりは、文字を読むだけでは見つかりません。
日本語詞と英語詞をどう使い分けるか

英語で書けば海外に届くわけではありません。言語はあくまで入口の一つで、聴かれるかどうかは楽曲と届け方の問題でもあります。
判断の軸として、次のように考えてみましょう。
- 繊細な感情や情景の描写を主にしたいなら、日本語
- リズムと勢いを前に出したいなら、英語
- 国内の聴き手との距離を縮めたいなら、日本語
- 楽曲の雰囲気を優先したいなら、英語
混ぜる選択肢もあります。日本語のヒット曲にも、サビだけ英語にする構成は数多く見られます。切り替えの位置が決まっていれば、違和感なく成立します。
ただし、言葉の切り替えは聴き手の意識を動かします。効果として使うのか、なんとなく混ぜているのか。この差は、聴けば伝わってしまうものです。
両方のバージョンを作る方法も検討できます。同じ曲を日本語版と英語版で出せば、それぞれの入口から聴き手が入ってきます。
大切なのは、言語を選ぶ理由を自分で説明できる状態にしておくことです。理由がある選択は、たとえ英語に粗さが残っていても、作品として立ちます。
まとめ

英語歌詞の作り方について、押さえておきたいポイントを整理します。
- 書き始める前に、なぜ英語なのかという目的を決める
- 日本語は1音符1音、英語は1音符1音節という違いを前提にする
- 単語の強い音節と、小節の強拍を合わせる
- 日本語の文章を訳すのではなく、仮の音を歌うところから始める
- 主語の省略や口語表現は崩せるが、複数形や前置詞の誤りは目立つ
- 抽象語を具体的な物や動作に置き換えると、既視感が消える
- 翻訳ツールは訳し戻しの検証に使い、英英辞典で場面を確認する
- 最終確認は英語話者に依頼し、歌詞であることを先に伝える
- 言語を選んだ理由を自分で説明できる状態にしておく
まずは好きな英語曲を1曲選び、歌詞を書き出して、どの音節が強拍に置かれているか印をつけてみてください。作り方の輪郭が見えてきます。
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インディペンデントアーティスト編集部
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